同時代ゲーム 大江健三郎

・6つの手紙からなる長編
・小説が神話になりうることを示している。大江健三郎の作品のなかでもこれだけの深く広い世界観を構築できている作品はないかもしれない
・その分纏まりにかけるのが欠点か
・第一の手紙が恐ろしく退屈
・逆に第二の手紙以降は完成度が高い。特に二〜四。
・「妹よ」という呼びかけを頻繁に用いることで独特の文体を構築している


P66
レイチェルのスペイン語は嫋々と湧きこぼれつづけ


P177
巨人化していた肉体がしだいに縮みこみ、そればかりか躯のむこうが透きとおって見えそうなほど稀薄になり、輪郭があいまいになって、ついに空中に消滅した創建者たち


P190
まだ森の樹木の枝によって「死人の道」がその上方を覆われていなかった頃なら、満月が天心にある時、完璧に水平な「死人の道」は月光をまっすぐに反射して、白く光る水の帯のようであっただろう。それは宇宙から降下する者への、蛇のかたちの指標ではなかっただろうか?


P314
かれらは轟音と暗闇に不意撃ちされ、自分らが森ぐるみ荒れ狂う濁水の中にあることを知り、そのまま鉄砲水そのものとして下方に噴射されつつ、膨大な魔力のうちに吸い込まれるようにして死んだのである