はじめての認知心理学 〜 伊藤進

・行動心理学では心をブラックボックスとして扱い、刺激と反応だけを問題にした
認知心理学では情報処理モデルを作りながら、それを基に心のすがたを描き出す


■情報の図と地

・図と地は膨大な情報量を頭が処理する上での基本戦略。これにより膨大な量の情報が入っても混乱しない。
・図と地の分化とは情報が頭の中で主要な領域と副次的な領域に分かれることをいう。主要な領域を「図」、副次的な領域を「地」と呼ぶ


■心的資源の集中と配分

・心的資源(頭脳が情報を処理するのに使えるパワー:記憶力や思考力、知識など)が限られる中で、どの処理にどれだけの心的資源を割り当てるかが重要。
・「意識的処理」と「自動的処理」があり、作業が熟練していくと自動的処理で対処するようになり、心的資源の消費が少なくて済む


ボトムアップ処理とトップダウン処理

①ターゲットとなっている対象から得られる情報「ターゲット情報」
②ターゲットを空間的、時間的に取り囲んでいるもの「文脈情報」
③頭脳にあらかじめ蓄えられている情報「知識」
ボトムアップ処理:ターゲット情報そのものの特徴分析からスタートする
トップダウン処理:知識と文脈情報から対象についての予想や仮説を立てる
・現実ではトップダウン処理に偏ることが多い。(精神病棟や絵画鑑賞の例)


■記憶・生を支えるもの

・自分がどんな人間かという認識と、自分はずうっと同じ自分だという実感が合わさったもの、それがアイデンティティ。私たちの頭脳は自分という人間の姿をいつも記述し、説明している。


■記憶のしくみ

・感覚記憶:情報をとりあえずキープする機関。ただし一瞬のみ
・短期記憶:心理的生活に「時の連続性」を与えてくれるもの。記憶容量に限界、7項目前後。別名作業記憶。
・長期記憶:記憶容量は無限


■知識のさまざまな形態

・長期記憶に蓄えられている記憶には2つの形態がある。一つが「それは何か、どうなっているか」という知識(宣言的知識)。もう一つが「何かを実行する」ための知識(手続き的知識)
・知識携帯の種類には別の種類もある。エピソード記憶:自分に起こったことの記憶。意味記憶:巨大な百科事典、一般化された知識の集合体。
・記憶力には構造化の程度が大きく関係する。構造化するほど意味記憶に組み込まれやすく、格納量が増え、検索性が高まる。
スキーマ意味記憶の中にある情報のパッケージ。ここの情報を蓄えなくて良いので情報の節約になる。またスキーマで様々なことを推測できる。その一方で誤解にもつながりやすい。
・これを人間に限定したものが「ステレオタイプ
メタ認知:頭脳が自分自身の情報処理活動についてモニターする働きのこと。「自分の記憶力はどれくらいかなど」


■認知的不協和とその解消

・互いに矛盾する二つの情報が同時に存在し、不快な緊張状態にあることを「認知的不協和」と呼ぶ
・認知的不協和の解消のためには①情報内容を変更する、②矛盾をなんとか理由付けできる情報を付け足す、という2つのやり方がある
・自分の気持ちや考えと食い違う言動を取ると、認知的不協和が発生し、取った行動に合わせるように気持ちや考えが変わりやすい。ただしそういう言動を取る理由(報酬や暴力・圧力)がある場合はそうはならない