文学論

神話と意味 〜 レヴィ=ストロース

P2 私は以前から現在にいたるまで、自分の個人的アイデンティティの実感をもったことがありません。私というものは、何かが起きる場所のように私自身には思えますが、「私が」どうするとか「私を」こうするとかいうことはありません。私たちの各自が、ものご…

小説の方法 〜 伊藤整

我々は神の代わりに無を考えることによって安定しているのである。考える力がないのではない。考える必要を感じないでバランスを保っているに過ぎない。無の絶対は神の絶対と同じように強いものである。 P43 小説はあまり現実の諸条件とかかわりが深いために…

ブルースト

作家の著書は一種の光学器械にすぎない、作家はそれを読者に提供し、その書物がなかったらおそらく自分自身の中からは見えてこなかったであろうものを、読者にはっきりと見わけさせるのである。 (『見出された時』)

ドストエフスキーの詩学

P15 それぞれに独立して互いに融け合うことのないないあまたの声と意識、それぞれがれっきとした価値を持つ声たちによる新のポリフォニーこそが、ドストエフスキーの小説の本質的な特徴なのである。 P48 ある環境における主人公の純粋に芸術的な位置づけは、…